世界的潮流としてのCBDC拡大
2025年に入り、各国中央銀行による CBDC(Central Bank Digital Currency) の実証実験は加速している。なかでも、最も先行しているのが中国の デジタル人民元(数字人民币, Digital RMB, e-CNY) である。
中国人民銀行(PBoC)は2020年から段階的に実証を開始し、2024年末には香港・マカオ・シンガポールとの越境決済実験を完了。今年1月には、国際商業決済銀行(BIS) のレポートでも「e-CNYは国際的なCBDC展開の最前線にある」と指摘された。
(参照:中国人民銀行)
香港・マカオを中心とした越境利用
特に注目すべきは、香港金融管理局(HKMA) が2024年末に公表した「e-CNYクロスボーダー利用報告」。これにより、香港の主要商業銀行を通じて中国本土との小口貿易決済や個人送金が可能になった。
香港市場は既に人民元建てのオフショアセンターとして確立しており、e-CNY導入によって「オフショア人民元+デジタル人民元」という二重の流動性基盤が整いつつある。
(参照:香港金融管理局 HKMA)
一方、マカオでは観光・エンターテインメント産業を通じた 個人消費分野での利用拡大 が確認されており、既に大手カジノ・ホテルチェーンがe-CNY決済に対応している。
BRICSにおける決済システム再編
さらに中華圏を超え、BRICS諸国 でもe-CNYを軸とした新しい決済ネットワーク構想が浮上している。2025年1月のBRICS作業部会では、ロシアが主導する「SPFS(SWIFT代替システム)」とe-CNYの接続テストが報告され、ブラジル・南アフリカも参加意向を示した。
これは単なる「技術実験」ではなく、ドル基軸通貨体制からの脱却を意識した戦略的動き と見るべきである。特にロシア産エネルギー、ブラジル産資源がe-CNY建てで取引される可能性は、国際エネルギー市場のパワーバランスを大きく揺るがすだろう。
(参照:BRICS情報ポータル)
欧州と米国の対応
一方で、欧州中央銀行(ECB)は デジタルユーロ の実証を進めているが、現状はまだ小規模な国内決済に留まる。米国に至っては、FRBが「デジタルドル」構想の調査段階 にあり、中国の先行に明確な遅れを取っている。
この差は、規制・プライバシー保護・金融覇権を巡る地政学的リスク が背景にある。特に米国議会では「デジタルドルが人民元の覇権拡大を後押しする」との懸念が繰り返し議論されている。
(参照:ECB Digital Euro)
日本の動向
日本銀行は「デジタル円」の実証を継続中であるが、その進展は依然として遅い。2024年時点で実証実験の第2フェーズにとどまり、実用化は早くても2028年以降 と見られる。
つまり、アジアにおける金融インフラ主導権争いでは 日本が傍観者的立場 に置かれつつある。
(参照:日本銀行 デジタル通貨実証)
API GROUP(恒信国际集团)の戦略的視点
API GROUPでは、e-CNY国際化の進展を「単なる通貨技術革新」ではなく、世界金融秩序再編の引き金 として捉えている。
特に以下の3点が注目に値する。
- 資産分散の新軸
- e-CNY建ての債券やマルチカレンシー商品が市場に登場すれば、富裕層資産管理(Private Banking)の新たな基盤となる。
- 新興市場における投資機会
- BRICSやASEAN諸国でのe-CNY活用が本格化すれば、従来ドル決済でしか参入できなかった市場に新しい投資扉が開かれる。
- 地政学リスクヘッジ
- 米ドル依存度を下げる動きは、対ロシア制裁や米中摩擦のリスクを直接回避する「金融ヘッジ」となる。
“e-CNY is not just a currency innovation, it is a strategic instrument reshaping global capital flows.”
—— API GROUP / 恒信国际集团

